この記事を書いた人 トリッパー編集部
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夏の旅は高速バスで!-東北・中部編-
記事作成日: 2021-05-17
夏の旅行は、暑さが苦手な方にはすこし悩ましいものです。観光のしやすい春や秋に比べると、夏は汗をかいてしまって疲れそうというイメージが強いのではないでしょうか。
目的地到着までの乗り換え回数も、夏はなるべく減らしたくなります。熱気の中、荷物を抱えて別の建物へ移動するのは楽しいことではありませんし、同じ建物の中ですむ場合でも、やはり貴重な体力を消費してしまいます。
そこで考えてみたいのが高速バスです。高速バスなら、面倒な乗り換え無しで目的の県の主要な地点に直行できます。比較的涼しい東北地方や、関東からの移動距離が短い中部地方への旅行は、それほど無理が無いのではないでしょうか。
今回は、そうした高速バスによる夏の旅のヒントとして、東京からオリオンバスの高速バスで行ける東北地方と中部地方の県をご紹介します。
目次
青森県
現在、オリオンバスの運行する高速バスでは、東京から青森まで行くことができます。東京からは直線距離でも600km近く離れていますから、個人の自動車では大変な労力が必要ですが、座席で眠っていれば自動的に到着する夜行バスなら実に簡単です。
これほど北に来れば、気温もだいぶ下がります。気象庁の2015~2020年の観測では、東京の7月の気温は27~32度、8月は30~34度ですが、青森は7月が21~24度、8月になっても22~25度です。ほぼ22度の東京の6月よりは熱気を感じるものの、とてもすごしやすい環境と言えるでしょう。
そんな夏の青森の名物と言えば「ねぶた祭り」です。県内で最も規模が大きいのは青森市中心部で行われる「青森ねぶた祭」で、勇壮な山車灯籠(だしとうろう)が夜を照らしながら進む様子は、とても迫力があります。
弘前(ひろさき)市の「ねぷた祭り」や五所川原(ごしょがわら)市の「立佞武多(たちねぷた)祭り」も、夏の観光の有力な候補となります(※どちらも表記は「ね『ぷ』た」です)。
夏の青森観光のおすすめスポット
十和田湖
青森と秋田にまたがる「十和田湖(とわだこ)」は、国内で3番目に深い湖です。時に鏡のようにもなる湖面を見ていると、夏の暑さで疲れた心も次第に落ち着いてきます。
ここから流れ出す「奥入瀬渓流(おいらせけいりゅう)」も含め、大切に記憶に残したい景色です。十和田湖には遊覧船もあり、湖畔の散策とは違った視点で湖を見ることもできます。
ねぶたの家 ワ・ラッセ
「ねぶたの家 ワ・ラッセ」は、ねぶた祭りの開催期間中でなくても山車灯籠を見ることができる施設です。
2階建ての館内には吹き抜けの部分があり、そこに巨大な山車灯籠が展示されています。これはサンプルではなく、前回の祭りで実際に使われたもの。当日の熱気が、今もその中に残っているようにも感じられます。
秋田県
「きりたんぽ」や「なまはげ」といった冬の風物詩が有名な秋田県ですが、もちろん夏に訪れても素晴らしい体験ができます。ビルに囲まれた街の中とは正反対の緑の世界に流れるのは、極上の癒やしの時間。清々しい空気を胸いっぱいに吸い込みたくなります。
夏の秋田の夜を彩るのは「秋田竿燈(かんとう)まつり」です。
夜空に向かう、9段・46個の提灯(ちょうちん)をさげた長い竿(さお)。その根本は何かに固定されているわけではなく、熟練の「差し手」が肩や額、腰などで支えています。竿と提灯の合計で50kgにもなる竿燈を力強く保持し、次々と支える場所を変えていく様子は、まさに職人の技。輝く木のような竿燈の見た目も良く、とても印象深い光景が生まれます。
温泉王国と呼ばれることもある秋田を旅するなら、「玉川温泉」や「乳頭温泉」といった評価の高い温泉もおすすめです。ほどよい気温のおかげで、とても気持ちよく入浴できるため、こうした温泉地は夏も人気があります。
夏の秋田観光のおすすめスポット
田沢湖
「田沢湖」は日本一深い湖です。最も深い部分は約423mで、青森と共有する十和田湖(※最大水深は約326m)と、100mほど差があります。これほど深い湖は世界でも珍しく、現在も17位という上位を維持しています。
静かな湖面を見つめていると、吸い込まれそうな錯覚を覚えるかもしれません。県内でも特におすすめの涼感スポットです。
男鹿水族館GAO
男鹿(おが)半島にある「男鹿水族館GAO」は、深さ8mの「男鹿の海大水槽」が自慢の水族館です。東北地方の水族館では並ぶものが無い巨大な水槽の中を、見上げるほど大きなアクリルの壁越しや、頭の上を魚が通りすぎるトンネルのような形で覗くことができます。
館内にはかわいいアザラシやホッキョクグマの姿もあり、とても癒やされます。
岩手県
およそ600kmのリアス式海岸「三陸海岸」に吹く海風も心地よい、夏の岩手県。ひんやりとした巨大な鍾乳洞「龍泉洞(りゅうせんどう)」や、水墨画のような景色が続く「厳美渓(げんびけい)」といった、涼やかなスポットは夏の観光の第一候補となります。
日本地図をザッと見ただけでは意識しにくいのですが、実は岩手は北海道の次に面積の大きな県です。知名度の高い所以外にも、快適なスポットがまだまだ隠れているかもしれません。
岩手は、現代の人々の心をも動かす童話や詩を残した宮沢賢治の出身地でもあります。都会とは比較にならない、澄み切った夏の夜空を見上げて銀河鉄道を探すといったロマンチックな楽しみ方もできますし、蒸気機関車「SL銀河」に乗り込んで、作品世界を体験するのも良い思い出となります。
岩手へ行くなら必ず訪れたい、金色堂(こんじきどう)のある「中尊寺」や、明治を舞台とした映画の巨大なセットのような「岩手銀行赤レンガ館」など、季節を問わない名所も絡め、旅行計画を考えていきましょう。
夏の岩手観光のおすすめスポット
龍泉洞
「龍泉洞」は、日本三大鍾乳洞の一つとして知られる巨大な鍾乳洞です。内部の調査は今も続いていて、総延長距離は現時点でも4,000mを超えています。
洞内は年間を通して10度前後になっているため、夏も暑さとは無縁で、むしろ寒く感じるほど。鍾乳洞特有の異世界のような景色の中には、神秘的な地底湖も登場します。
浄土ヶ浜
砂浜の前に、尖った大きな岩が壁のようにいくつも並ぶ「浄土ヶ浜(じょうどがはま)」。岩を山に見立てれば、確かに浄土の風景のようにも見えてきます。
雪をかぶった冬の姿も悪くないのですが、夏の鮮やかな緑も負けてはいませんし、何より砂浜での海水浴という楽しみがあります。角度を変えて眺められるように、展望台も複数用意されています。
山形県
かつて、「奥の細道」の中で松尾芭蕉(ばしょう)が俳句を詠んだ「最上川」。その最上川がうるおす大地を、樹氷で有名な蔵王(ざおう)をはじめとした美しい山々が囲んでいるのが山形県です。
この山形で夏を満喫するなら、まず考えられるのはその名前にも含まれている「山」でしょう。山寺(やまでら)の名で知られる「立石寺(りっしゃくじ)」は、山形観光を語る際には必ず名前が出てくる名所ですし、「羽黒山(はぐろさん)」の五重塔も、なんとも神秘的です。
逆に運動を避けたいなら、最上川の舟下りや、情緒たっぷりの「銀山温泉」のような水(お湯)の楽しみもあります。
また、山形はフルーツ王国としてもよく知られています。さくらんぼの時期が終わる夏は、桃やブドウの収穫が始まる時期です。旅の中にそうしたフルーツ狩りを加えるのも、悪くないアイデアです。
日常生活の中で手にするフルーツと現地で厳選したフルーツは、やはり違います。一口かじれば、口の中に広がる果汁とおいしさが大きな幸福感を与えてくれるでしょう。
夏の山形観光のおすすめスポット
蔵王ロープウェイ
山形の自然はとても素晴らしく、高い所からも見たくなりますが、夏に山を登るのはなかなか大変です。
そんな悩みを解消してくれるのが、この「蔵王ロープウェイ」です。身体への負担はありませんし、移動している間も次々に変化していく足元の景色を楽しむことができます。山形観光に新たな視点を加える、強力な選択肢です。
鶴岡市立加茂水族館
「鶴岡市立加茂(かも)水族館」という名前からは想像しにくいのですが、こちらは「世界一のクラゲ水族館」を名乗るユニークな水族館です。現在は「クラゲドリーム館」という愛称の方が有名かもしれません。
もちろん、他の魚やアシカなどの姿もありますが、最も力を入れているのは、やはりクラゲです。その独特な美しさに魅了されます。
宮城県
かつての日本では、七夕(たなばた)の行事が当たり前のように行われていました。しかし、近代化と共にそうした風習は過去のものとなり、大々的に七夕祭りのようなものを行う地域は減っていったのです。ですが、昭和初期の仙台では、旧暦7月7日の七夕を「現在の暦の8月7日とその前後の日」に祝うこととし、夏の一大イベントとして打ち出しました。
これが現在まで続く、宮城県の「仙台七夕まつり」です。短冊や折り鶴、吹き流しなど7種類の飾りで作られた「七つ飾り」と呼ばれる七夕飾りは、安いものでも数十万、高ければ数百万円もするという豪華なもの。
そのどれもが、色鮮やかで目を楽しませてくれます。華やかな洋と落ち着いた和という違いはありますが、仙台の中心部が夏のクリスマスのような雰囲気に変わる、素敵なイベントです。
また、さまざまな大きさの島がたくさん集まっている「松島」や、蔵王の火口湖「御釜(おかま)」など、自然が生み出した宮城の名所も、常に高い評価を受けています。
夏の宮城観光のおすすめスポット
松島
一般的に、松島という言葉は「松島という地域」「そこにある大小260あまりの島々」「それらが構成する景勝地」といった意味で使われます。その景色は、方角や高さなど見る位置の変化によって大きく変わります。
観光船に乗って内側から眺めることもできますから、何度訪れても新鮮な景色と出会える名所と言えるでしょう。
秋保大滝
「秋保大滝(あきうおおたき)」は、和歌山県の那智滝(なちのたき)や栃木県の華厳滝(けごんのたき)と肩を並べるような見事な滝です。
落差55m・幅6mと、数字で1位を争うタイプの滝ではありませんが、景観の良さはかなりのもの。下流には「秋保温泉」があり、滝を見た後にこちらへ向かうというプランも考えられます。
富山県
富山県には、大自然と人間の力の偉大さがひと目でわかるスポットがあります。それは7年もの努力の果てに完成した「黒部(くろべ)ダム」です。
黒部川の水をせき止めている堤(つつみ)の高さは186mもあり、それを生み出した人々の技術や熱意に驚かされます。186mと言えば、東京タワーの中間地点(=166.5m)よりもさらに上。富山県内にはこれほど高い建物はなく、また国内にこれ以上高い堤を持つダムもありません。
そして、毎年6月の終わりから10月の初めごろまでは、観光放水が行われます。すさまじい勢いで水が吹き出す様子は、実に豪快。夏の暑さも、一瞬忘れてしまうことでしょう。堤のそばや小高い場所のダム展望台など、観光放水が綺麗に見えるスポットも多く、秘境と呼ばれた黒部の夏の景色とダムとを存分に楽しむことができます。
同じように水がキーワードの名所として、落差日本一の「称名滝(しょうみょうだき)」も夏の富山観光の有力な候補になります。長く流れ落ちる滝は迫力満点です。
夏の富山観光のおすすめスポット
黒部峡谷
ダムの工事関係者を悩ませた「黒部峡谷(きょうこく)」の豊かな自然は、観光という視点から見れば実に素晴らしいものです。
大きな怪物の口の中を歩くように、頭上に張り出した岸壁にヒヤヒヤする「人喰岩(ひとくいいわ)」や、高さ34mの「奥鐘橋(おくかねばし)」など、その景色に思わず足を止めたくなるスポットがいくつもあります。
富岩運河環水公園
富山市の「富岩(ふがん)運河環水公園」は、富山市の発展を力強く支えた富岩運河の上流部分に造られた公園です。
この公園から出発する運河クルーズ「富岩水上ライン」では、途中でパナマ運河のような水位を調整する仕組みも体験できます。夜のライトアップも好評で、夏は園内が富山の海のような青い光に照らされます。
石川県
加賀百万石と呼ばれた時代の栄華を今も残す石川県。県庁所在地の金沢は、内に秘めた輝きを感じさせるおしゃれな街です。雰囲気の良い街並みを見ながら散策するのは、混雑が始まってしまう前の早い時間帯が良く、高速バスの夜行便との相性は抜群と言えます。
この高速バスの乗車・下車場所は金沢駅ですが、ここにも「鼓門(つづみもん)」と呼ばれる鼓のような形の柱を持つ門があり、到着と同時に金沢のセンスの良さを知ることができます。さらに、遠い時代を想像させる武家屋敷や茶屋街、日本三名園の「兼六園」など、金沢には和の魅力が満ちています。
また、海に突き出た能登半島も石川県の特徴的な部分です。この能登半島には、岩牡蠣(いわがき)の名産地があります。夏に訪れれば、身がたっぷりと詰まった岩牡蠣をおいしく味わえます。
旬の時期に、現地で新鮮なものを口にするのは旅の醍醐味です。しかも、海のミルクと言われるほど栄養豊富な食材ですから、その後の観光をさらに元気に楽しむための活力も与えてくれます。
夏の石川観光のおすすめスポット
兼六園
「兼六園(けんろくえん)」は、茨城県の偕楽園(かいらくえん)や岡山県の後楽園と並ぶ日本三名園の一つです。
梅雨がすぎた後の兼六園は次第に暑さを増していきますが、園内を静かに流れる水や落ち着いた緑が柔らかな涼感をもたらします。周辺に宿が多い金沢駅からは車で10分ほどの距離ですから、気温の低い朝や夕方の散策もおすすめです。
白米千枚田
日本にはいくつもの棚田(たなだ)がありますが、この「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」の特徴は日本海に面しているということです。そのおかげで、海に沈む夕日と棚田という、とても美しい光景を見ることができます。
夏の観光地として選ぶ場合、旅行者の姿が特に増える田植え・収穫の時期と重ならないというメリットもあります。
福井県
夏は海が恋しくなる季節です。福井県には、水質・環境マネジメント・安全性などさまざまな角度から審査される国際環境認証「ブルーフラッグ」を、アジアで初めて取得した「若狭(わかさ)和田海岸」があります(※2016年に神奈川県の由比ヶ浜と同時に取得しました)。
国際的な環境団体から見ても素晴らしいと思えるビーチは、一度は体験する価値があります。恐ろしくも美しい断崖絶壁「東尋坊(とうじんぼう)」と共に、福井の誇る海の宝と言えるでしょう。
そして、福井では陸地の中にも大きな宝が埋まっています。新発見のたびに大きなニュースとなる恐竜です。世界三大恐竜博物館の一つ「福井県立恐竜博物館」では、人類の時代が始まる前に姿を消してしまった恐竜たちのことを学ぶことができます。
また、鯖江(さばえ)市の「めがねミュージアム」も福井ならではの施設として興味深い存在です。夏休みの宿題と戦った子どものころを懐かしく思い出しながら、どちらも大人の自由研究のような気分で見学するとおもしろいかもしれません。
夏の福井観光のおすすめスポット
東尋坊
高い所がそれほど苦手でなくても肝が冷えてしまう絶景スポット「東尋坊」。スカスカの非常階段も怖いという方には刺激が強すぎる、すさまじい断崖絶壁ですが、安全な所から全体の様子を眺めるという楽しみ方もあります。
風や冷気といった物理的なものとは違う方向から体感温度が下がる、夏のおすすめスポットです。
越前松島水族館
現在の水族館では、実にさまざまな工夫が行われています。この「越前松島水族館」で注目したいのは、「さんごの海」と呼ばれる水槽の上に張られたアクリルの板です。
ここは靴を脱いで自由に歩けるようになっているため、まるで海の上を歩きながら足元を泳ぐ魚たちを見ているような、とても不思議な体験ができます。
愛知県
愛知県の名古屋市は、東京都や大阪府とセットで語られることが多い大都市です。
東京から見た場合、名古屋までの直線距離は約270km。その1.5倍の約400km離れている大阪よりも気軽に遊びに行くことができます。この近さにより、夜行便だけでなく、朝に出発し、その日のうちに到着する昼行便という選択肢があるのもうれしいところでしょう。
金のシャチホコが輝く「名古屋城」をはじめ、名古屋には数々の見どころがありますが、食の魅力も見逃せません。いわゆる「名古屋めし」です。
味噌とカツという不思議な組み合わせが絶妙な風味を生み出す「味噌カツ」や、うなぎをさまざまな角度から味わう「ひつまぶし」など、おいしい料理があなたを待っています。夏の暑さが本格的になると食欲が落ちてしまうこともありますが、旅先で出会う普段と違う味や香りは、とても良い刺激になるはずです。
名古屋に慣れてきたなら、次のステップへ。トヨタ自動車の本拠地である豊田や、徳川家康ゆかりの地・東岡崎など、愛知での行動範囲を広げてみましょう。
夏の愛知観光のおすすめスポット
日間賀島
三河湾には人の住む島がいくつかあります。その一つの「日間賀島(ひまかじま)」は、高速船やフェリーでのアクセスも良く、観光ルートに入れやすい島です。
湾内での島ですから、陸地からは片道10分や20分程度しかかかりません。この短い時間で、夏の日差しと潮風を浴びて、空気の違う離島へ行くという体験ができます。
ラグーナテンボス
おしゃれなリゾート「ラグーナテンボス」のコンセプトは、ズバリ「海」。目の前には三河湾が広がり、テーマパーク「ラグナシア」にも海の要素が盛り込まれています。
宿泊施設の「変なホテル ラグーナテンボス」は、さまざまなロボットが働いていることで話題を集めているホテルです。これもまた、旅先での貴重な体験になります。
※本記事内の情報は、すべて2021年5月時点のものです。
あまりにも暑い日は、冷房の効いた部屋に閉じこもりたくなりますが、思い切って旅に出れば、日常生活の範囲では考えられないような体験ができます。気温の下がった夜に集合場所に向かい、翌日のあまり暑くならない時間から現地での観光を始められる夜行便というスタイルも、夏という時期にはぴったりです。
涼しさやおいしさ、楽しさなどを求めて、この夏は高速バスで旅に出てはいかがでしょう。