この記事を書いた人 トリッパー編集部
記事作成日:
あの名作の世界を再現!『ジブリパーク」へ行こう!
記事作成日: 2023-05-08
今や世界中にその名を知られている「スタジオジブリ」。最近はテレビや雑誌で他のアニメ制作会社の名前を見る機会も増えましたが、そのはるか前から、スタジオジブリという名前は世間でよく知られていました。
そのジブリのテーマパークが、愛知県にできた「ジブリパーク」です。
これまでジブリ関連の施設といえば「三鷹の森ジブリ美術館」でした。ジブリパークは、この美術館とは違う、新たな楽しみを提供します。
今後、愛知県の注目スポットになることが間違いないジブリパークの詳細やアクセス、今後の拡張予定などを詳しくお伝えします。
目次
愛知県に誕生したジブリパーク
スタジオジブリが設立されたのは、今から40年近く前の1985年です。それ以来、このアニメスタジオは私たちに数々の夢を見せ続けてくれました。重厚な設定を持つ異世界での胸躍る冒険から、日常と隣合わせのようなファンタジー、そして古き良き日本の風景まで、その方向性は実に多彩。若いクリエーターの作品の中にも。その影響は強くうかがえます。
国内にとどまらず、世界に目を向けても非常に高い人気を誇るスタジオジブリの作品の世界を体験できるのが、愛知県に誕生した「ジブリパーク」です。
開園日ば2022年の11月1日。「2_22の11_1」という、覚えやすい数字です。
ジブリ公式の施設として、これまで「三鷹の森ジブリ美術館」こと三鷹市立アニメーション美術館が親しまれてきましたが、こちらは美術館という名前が示すように、大規模なものではありませんでした。
ジブリパークは複数のエリアからなる、本格的なテーマパークです。その内容も三鷹の森ジブリ美術館を単純に拡大したものではなく、新たに考えられています。
ジブリパークはどこにある?
ジブリパークが造られたのは、「愛・地球博記念公園」の中です。2005年に開催された愛・地球博は、21世紀に入って初めての国際博覧会として大きな注目を集めました。かつて多くの人々で賑わったこの場所が、これからはジブリを愛するファンが集う場所になるわけです。
「モリコロパーク」とも呼ばれる愛・地球博記念公園があるのは、愛知県の長久手(ながくて)市です。地図の上では、名古屋市の東側。南には豊田市があります。
名古屋駅からの直線距離は約18kmですから、それほど離れてはいないのですが、開けた土地はこの辺りまで。ここからは、緑の大地が始まります。
ジブリパークはこの境界線、言い換えるなら大自然への入口にあるわけです。
ジブリパークの特徴は?
「有名な作品の世界を再現したテーマパーク」という言葉を聞いてすぐに思い浮かぶのは、東京ディズニーリゾートとユニバーサルスタジオジャパンではないでしょうか。
TDRとUSJは、どちらも豊富なアトラクションやショー、パレードや特別なイベントなど、さまざまな方法で来場者を楽しませてくれる素晴らしいテーマパークです。ジブリパークにも、おそらくそうした成功例を参考にするという選択肢はあったのでしょう。
ですが、ジブリパークはあえて独自の道を選びました。「森との調和」を掲げたジブリパークには、スリル満点の絶叫系の乗り物はありません。「どのエリアにも巨大なアトラクションが並び、大行列ができている」という、おなじみの光景とも無縁です。
近代的な空間で、来場者の手を引くように楽しさを与えるのではなく、まるで宝探しのように、緑あふれる世界での散策を楽しみながらジブリの作品の名場面に触れていく。これがジブリパークのスタイルです。
ジブリの宮崎駿(はやお)監督は、「子どもたちに自然や森の中で遊んでほしい」という想いを込めて、いくつもの作品を世に送り出しました。しかし、そうした作品を見て感動し、大好きになっても、多くの子どもたちの足は自然の方へは向かいませんでした。
自然に興味を持たせ、想像力や冒険心を育むという点では大成功だったものの、監督の心には心残りがあったのでしょう。
ジブリパークは、かつての子どもたちを、そして今の子どもたちを森へと誘う、ジブリの新たな挑戦とも言えます。
このようなスタイルのテーマパークですから、来場者を丁寧にもてなしてくれるTDRやUSJへ行く時のように「テーマパーク側にすべておまかせ」という態度では、十分に楽しむことができないかもしれません。逆に、「積極的に楽しもう」という気持ちで向かえば、整然とした近代的・未来的なテーマパークよりもずっとジブリらしさが感じられる、素晴らしいスポットだと思えるでしょう。
ジブリパークは予約が必要?
現在のジブリパークには三つのエリアがあり、それぞれの入場チケットが予約販売されています。日時指定(※退場時間は自由)のこのチケットを入手できなければ、これらのエリアに入ることはできません。
と、公式サイトなどでは簡単に説明されているのですが、実際はもうすこし複雑です。
まず、ジブリパークは新たに確保された独自の敷地ではなく、愛・地球博記念公園の中に造られています。この公園への入場は無料です。
そして、ジブリパークのエリアと言われる部分にも入ることができてしまいます。実は、各エリアの中に有料のエリアがあり、そこへ入る際にチケットが必要になるのです。それ以外の部分には、いつでも無料で入ることができます。
この無料エリア側にもジブリ作品に関連する建物やオブジェがありますから、それらを探して歩くこともできます。また、有料エリアの外側から内部の建物などを眺めたり、撮影したりするのも自由です。
(※ジブリパークのすべての場所で撮影が許可されているわけではありません。撮影の前に警告の有無をご確認ください)
無料部分が少ないエリアもありますし、本来の魅力を知るためには、やはり有料エリアに入るべきなのですが、これもまた一つの楽しみ方です。
入場チケットの争奪戦が厳しく、なかなか入手できない場合や、別件で名古屋へ行った際、軽く下見をしておきたい場合は、ひとまず有料エリア以外の部分を散策するだけでもジブリパークの雰囲気をつかむことができるでしょう。
ジブリパークへのアクセスは?
どの交通手段でも、愛知県でのスタート地点は名古屋駅になるでしょう。ここでは、名古屋駅からジブリパークまでの移動と、東京から名古屋までの移動を考えていきます。
名古屋駅からジブリパークまで
ジブリパークおすすめの、名古屋駅からの移動方法は次のとおりです。
【名古屋駅】:地下鉄東山線・藤が丘行き→【藤が丘駅】:Linimo・八草行き→【愛・地球博記念公園駅またはその手前の公園西駅】・・・徒歩・・・ジブリパーク
藤が丘駅からのLinimo(リニモ)とは、電車の代わりにリニアモーターカーが採用されている路線のこと。このように日常的にリニアモーターカーが走っている路線は、現時点の日本ではLinimoだけです。ジブリパーク到着前の、ちょっとしたお楽しみと言えるでしょう。
愛・地球博記念公園駅までの片道の所要時間はおよそ50分で、費用は670円(=地下鉄310円+Linimo360円)です。公園西駅の場合はLinimoの運賃が300円になります。
愛・地球博記念公園駅は、公園北側のメインゲート前にあります。ここから最寄りのエリアまでは、徒歩で8~10分ほどです。
一方、公園西駅で下車する場合は北西のゲートから公園に入ることになります。愛・地球博記念公園駅とは約1km離れているため、すこしだけ長く歩くことになりますが、メインゲート側の混雑を避けることができます。
東京から名古屋まで
東京方面から名古屋駅までは、新幹線を含む電車・高速バス・マイカーなどが考えられます。飛行機も利用できますが、空港との移動を含めたさまざまな手間がかかりますし、料金の振れ幅も大きいです(=格安便や早期予約が利用できないと高額になります)。東京~名古屋間では、圧倒的な速度という飛行機のメリットよりもデメリットの方が目立つことが多いでしょう。
飛行機以外の交通手段の特徴を比較すると、
新幹線:高速。料金が高い。
高速バス:速度は普通。料金が安い。
マイカー:速度は普通。料金は何人乗るかで変わる。運転が必要
このようになります。具体的に見ていきましょう。
東京から名古屋まで運転すると、およそ4~5時間かかりますが、新幹線なら最短100分程度です。一方、料金を見ると新幹線は約1.1万円で、高速バスは約3,000~5,000円と、高速バスの圧勝です。マイカーは乗車人数で費用が大きく変わりますが、2~3人なら高速バスと似たような金額です。
よって、料金よりも速度を重視するなら新幹線、片道4~5時間の運転が苦にならないならマイカー、費用の安さと運転不要という手軽さを求めるなら高速バス、という選び方になります。
オリオンバスを利用する場合、朝8時前に出発する昼行便に乗れば、13時すぎに名古屋駅に到着します。ここからジブリパークまで1時間弱かかるわけですから、やや遅めの到着ですが、宿泊して翌日向かうなら問題はありません。
一方、前日の夜23時すぎに出発する夜行便に乗ると、朝5時すぎに着きます。ジブリパークの営業時間は、土日休日は9時から17時、平日は10時から17時(※学校の長期休暇中は9時から営業)ですから、名古屋駅の周辺で朝食を食べたり、簡単に食べられるものを買っておく余裕もあります。
一番早い便でも到着が7時30分ごろになる新幹線では、9時からのチケットを利用する場合はギリギリです。マイカーの場合も、2時に出発して徹夜で運転し、7時到着を目指すのは厳しいのではないでしょうか。
このように到着時刻・料金・所要時間など、さまざまな要素を比較し、納得のできる方法を選んでみましょう。
ジブリパークのエリア紹介
現在(※2023年4月)、ジブリパークで楽しめる三つのエリアの特徴をご紹介します。
青春の丘
駅から南に向かい、最初に遭遇するエリアは「青春の丘」です。
まず目を引くのは、大きな「エレベーター塔」でしょう。19世紀末ヨーロッパの、大きな文字盤を持つ時計塔、というイメージです。
まったくありえないようなデザインでもなく、かといって現実そのままでもないデザインのセンスは、やはりジブリ。今後の作品の背景にこっそり紛れ込ませても、違和感は生じないでしょう。
思えばジブリができる前の宮崎監督の作品「ルパン三世 カリオストロの城」でも、時計塔は重要な場面で使われていました。それほど見た目のインパクトが強い建物ということです。
この時計塔は、青春の丘エリアの有料区域外にあります。無料ですし、予約日時に縛られることもありませんから、注目の撮影スポットと言えるでしょう。
有料となっている部分の主な見どころは「地球屋」と「猫の事務所」です。
「耳をすませば」に登場した地球屋では、アンティーク雑貨やバイオリン工房などが丁寧に再現されています。大きなガラスの向こう側に、セットのように展示されているタイプと違い、ここでは本当に家の中に入り、(許可されている範囲内で)自由に行動することができます。作品の中では映らなかったものを見つけたり、まったく違うアングルで眺めてみたりと、まるで物語の1シーンに飛び込んだような気分を味わうことができます。
一方、「猫の恩返し」の「猫の事務所」は猫用の建物ですから、残念ながら人間が入れるサイズではありません。しかし、外から見える内部は作り込まれており、その再現度の高さに感心させられます。「実際の建物と同様に、基礎工事から木材を組み上げていった」というこだわりにも脱帽です。
建物ではないのですが、これ以外にいくつもの「再現ポイント」のようなものがあります。一本杉や掲示板など、こうしたポイントを探してみるのも楽しいでしょう。
ジブリの大倉庫
次の注目エリアは「ジブリの大倉庫」。駅からは約10分、青春の丘からは2分ほどの場所にあります。なお、これは平均的な大人の所要時間ですから、小さなお子様との旅行では、もうすこし長めに考える必要があります。
このジブリの大倉庫には、数々の人気作品のネタが詰め込まれています。
たとえば、「ジブリのなりきり名場面展」は企画展示の一つで、有名作品の1シーンを立体的に再現したものです。「電車の座席に座っているカオナシ」のシーンで、その隣に座れば「千と千尋の神隠し」ごっこができる、というわけです。
「天空の庭」では「天空の城ラピュタ」に登場した、あのロボット兵があなたを待っています。忠犬のように主を待ち続ける姿は、やはり胸に迫るものがあります。
変わった体験が楽しめるのは「床下の家と小人の庭」。「借りぐらしのアリエッティ」で描かれた、小人たちの世界を再現したコーナーです。つまり、ここでは普段私たちが目にする小さなものが、すべて大きくなっているのです。
ファンタジーから日常へ目を向けて、「コクリコ坂から」の「哲学研究会部室」を訪れるのも良いでしょう。雑然とした空間にはなんとも言えないリアルさがあり、学生たちの生活が目に浮かびます。
古き良き日本の商店街のような「南街」もおもしろいスポットです。ここにある「熱風書店」「大空模型」「駄菓子 猫かぶり姫」といった商店では、実際に商品を買うこともできます。作品の中で空への憧れを隠さない宮崎監督が手がける、大空模型の品揃えもファンは必見です。
ジブリパークの散策でお腹がすいてきたなら、カフェ「大陸横断飛行」で一休みしましょう。用意されているメニューは、サンドイッチやピザが中心となっています。このメニュー、「長距離を飛ぶパイロットがコクピットで片手で食べるもの」というコンセプトで作られたそうです。こうした細かい部分にも、ジブリパーク全体のイメージを大切にするこだわりが感じられます。
エリア内には「ミルクスタンド シベリ❆あん」もあります。こちらでチェックしたいのは「風立ちぬ」で登場したお菓子「シベリア」です。映画を見ていて「どんな味だろう?」と思いながら食べそびれていたなら、ぜひここで味わってみてください。
どんどこ森
メインゲートから最も遠い、大人の足で約25分の所に位置するのは「どんどこ森」。名前のとおり緑に包まれた、「となりのトトロ」を思わせるエリアです。
このエリアで有料となっているのは「サツキとメイの家」と「どんどこ堂」です。
サツキとメイの家は愛・地球博の時点で建てられたものですから、すでにご存じの方も多いかもしれません。あれから20年近く経過した今、その年月がさらなるリアリティを与えています。
裏山の頂上へ向かう道の先には、トトロの形をした木製遊具のどんどこ堂(※小学生まで利用可能)が待つ広場があります。売店で販売されているものもトトロ系のオリジナルアイテムが中心で、ファンにはたまらない、トトロ尽くしのエリアと言えます。となりのトトロは子どもたちからも非常に愛されている作品ですから、ファミリーでの旅行でも外せないエリアでしょう。
お子様の疲労や熱中症に十分注意する必要はあるものの、駅からの道のりも散策を楽しめばそれほど大変ではありません。宮崎監督が願ったように、お子様と森との触れ合いを促す意味でも、なるべく訪れてみたいところです。
これからの展開は?
ここまで三つのエリアを見てきましたが、これがジブリパークのすべてではありません。
実は、現時点のジブリパークは第1期。この先に第2期が予定されています。
思えばTDRもUSJも、最初から完璧な姿だったわけではありません。開園から歴史を重ね、時に来場者の意見も取り入れながら、今の状態へと近づいてきました。
ジブリパークもまた、これから徐々に姿を変えていくことになります。
第2期では、まず「もののけの里」と呼ばれる新規エリアが登場する予定です。現在は2023年秋のオープンを目指し、準備が進められています。
ジブリの作品には一般的な意味での「物の怪」、つまり妖怪をはじめとした非日常の存在もいろいろと出てきますが、単純にこの言葉を使うなら、それが示すのはもちろん「もののけ姫」です。
ここには体験学習ができる施設として「タタラ場」が登場。その他にも「炭焼き小屋」など、劇中の風景を再現する建物が用意されます。
また、猪神「乙事主(おっことぬし)」をイメージした滑り台も設置予定です。
「もののけ姫の森」と言えば鹿児島県・屋久島(やくしま)の「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」が有名ですが、この「もののけの里」もそれと並ぶ新たな聖地になるのかもしれません。
続く追加エリアは「魔女の谷」。こちらのベースになるのは「魔女の宅急便」や「ハウルの動く城」といった、ヨーロッパ風の世界の物語。美しくも日常感のある異国の風景を体験できる場所になります。
主なスポットは、魔女の宅急便の主人公「キキ」が暮らす「グーチョキパン屋」や彼女が育った「オキノ邸」。外観だけでなく、キキが生活する屋根裏部屋や、夢見る日々を送ったオキノ邸の自室なども再現されます。
同じく魔女の登場する作品として「アーヤと魔女」からは、物語の舞台となる「魔女の家」をピックアップ。こちらも魔女の作業場やアーヤの寝室などが再現される予定です。
そしてもちろん、「ハウルの城」も建設予定です。こちらも内部の構造まで手を抜かれないことでしょう。
このエリアは、2024年3月にオープンする予定です。
これ以外にも小さな改良として、「もののけの里」予定地の近くの広場に、滑り台・迷路・ターザンロープなどが設置されます。こちらは2023年夏から使用可能になるとされています。
元気なお子様とジブリパークへ行く際は。有料エリアですごした後の空き時間にも、無料エリアだけですごしたい場合にも役に立つことでしょう。
いずれも魅力的なエリアですから、「魔女の谷ができるまで待つべきでは?」という考えも出てくるかもしれません。もちろん、それも一つの方法です。
ですが、生まれたばかりのジブリパークの姿が見られるのは今だけです。今から東京ディズニーランドの開園直後や、東京ディズニーシーができる前に戻ることはできませんが、今ジブリパークに行けば、将来「あの頃のジブリパークは……」と話題にできるわけです。さらに、繰り返しジブリパークを訪れて、新エリアの登場で変わっていく姿を見ることもできます。
この点にこだわらないとしても、旅行では「タイミングを外して、なんとなく行きそびれてしまう」ということが少なくありません。今現在、行きたい気持ちがあるのなら、ジブリパークへの旅を真剣に検討することをおすすめします。
ジブリパークの公式Twitterには、次のような一文があります。
「もとある自然はなるべくそのままに、森と相談しながらつくっています」
自然と戦って開拓する方法だけでなく、自然と手を取り合って共生する道も尊重し、考え続ける。これは「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」をはじめとしたジブリ作品で、繰り返し描かれてきたことです。
「愛・地球博記念公園を大きく切り開いて、アトラクション満載のテーマパークを造る」という方向性もありえましたが、ジブリが選んだのは、熟練の職人のように信念を曲げず、ジブリらしいものを造ることでした。
一般的なテーマパークとは一味違うジブリパークで、あの素晴らしい世界を体験してみてはいかがでしょう。
※本記事内の情報は、すべて2023年4月時点のものです。