この記事を書いた人 ayamocha
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一生に一度はこんぴらさん♪覚悟を決めて登ってきました
記事作成日: 2015-08-31
香川県の金刀比羅宮といえば、「こんぴらさん」の愛称で古来より日本全国から信仰を集める海の神様です。特に「海」「船」に関するお仕事の方々からは篤く敬われており、古くは船の絵、今でも船影が奉納されています。主祭神は記紀神話に登場する大物主神で、水の神様としての性格を持つ神様です。
そしてこの神社で有名なのが、本宮まで785段、奥宮までは1368段にもなる石段です。金刀比羅宮は象頭山(標高538m)の中腹に鎮座しており、標高70m程度の門前町に1段目がありますので、この段数は致し方なし。
四国に来たからには是非ご参拝したいと、7月後半の不運にも梅雨明け初日、晴天の暑さの中に覚悟を決めて登ってきました。
はじめにお断りしますと、夏の昼間のご参拝はおすすめできません。
私が訪れたタイミングが非常にマズかった事は重々承知していますが、特にお昼前後、午後早い時間は…暑くて暑くて暑くて大変でした。夏でしたら早朝か、曇天の日を狙うと身体がいくぶんラクだと思います。
【大門までは門前町が続きます】
琴電琴平駅から金倉川を渡り琴平温泉街を通り抜けると、石畳で綺麗に整備された広い参道に入ります。
山道の両側にはお土産屋、酒蔵、和雑貨屋にうどん屋にお茶屋と様々なお店が並び、ご参拝前だというのにフラフラ引き込まれてしまいそうになります。
そんな参道を200mほど進むと、いよいよ1段目の階段が見えてきました。道幅は狭くなりますが、ひき続きお店が並ぶ門前町で、階段も思っていたよりも緩やかな印象を受けました。10段登って平場、20段登って平場…というペースに「これは意外とラクに登れるかも」なんて軽く考えていたのです。
丸亀団扇や和三盆のお菓子、お醤油、ゆずと香川の名産を扱うお店がひき続き並びますが、何だかだんだんお茶、甘味、かき氷の文字が増えてくるような…?と不思議に思っていたら、100段目の辺りにある「一之坂鳥居」をくぐると階段傾斜が急にキツくなってきます。1段1段が間は詰まるけど高さが変わらない、という状態。さあいよいよか…!と覚悟を新たにして、慌てずマイペースに登っていきました。
嬉しかったのが、門前町での石段上には日よけ布の屋根が張られていたことです。店頭の品を雨や日差しから守る為のものでしょうか、日傘をささずに済みとても助かりました。これが無かったらあまりの暑さに途中リタイアしたと思います。門前町の方々に感謝です。
江戸時代に造られた灯明堂や、振り返ってだんだん見渡せてくる讃岐平野を見て休憩しつつ、385段目の大門に着く頃にはもうヘロヘロ…水分補給のためにちょっと休憩しました。
なお近頃は、大門まで行ける乗合タクシーがあります。直前予約でもOKですので無理せずご参拝したい時におすすめです。
また麓から大門まで駕籠に乗れる「石段駕籠」も面白そうです。昔ながらの駕籠に乗り、紅白の紐につかまりながら2人の担ぎ手さんに運んで頂きます。前日までの予約で往復6800円、登りのみ5400円(子どもは2人同時利用可能)。お値段はちょっと張りますが、体力温存だけでなく旅の思い出づくりにも良さそうですね。
【旭社で心が折れかかる】
大門から向こうはいよいよ金刀比羅宮の神域となりますので、雰囲気もガラリと変わります。お店は無くなり、唯一「加美代飴」というベッコウ飴を販売する「五人百姓」の方々が露天を出すのみです。
しばらく緩やかに石畳が続きます。両側には石灯籠が並ぶほか、緑が眩しい桜の木がたくさん植えられています。春には「桜馬場」の名称の通り見事な桜並木となるそうです。
そんな清々しい時間もすぐに終わり、鳥居が見えてくると石段再開です。今度は10段、20段なんて可愛い事は無く一気に来ます…。傾斜がどんどんきつくなるので、門前町を登るよりもよりキツく感じます。
本物の神馬が住む厩(たまに前の広場で走っているそうです)、美しく壮麗な表書院と各ポイントで休みつつ、どんどん石段を登っていきます。500段目には資生堂パーラーが運営する「神椿」という素敵なカフェへ行ける通路があって、途中の休憩にはもってこいです。
それでも階段の多さと暑さに体力はガシガシ削られていきます。いま自分が何段目に居るのかもわからないくらい疲れて、そんな時に目の前に壮麗なお宮が見えたら、本宮に着いた!と思って不思議ではないですよね。
しかしそこは「旭社」という、江戸時代まで神仏習合していた際にあった「松尾寺」の金堂だったのです…。多くの先人達が体験したであろう洗礼を、私もバッチリ受けてしまいました。それを裏付けるかの如く、旭社前の広場には大勢が座れる屋根付き休憩ベンチがあります。折れかかる心を復活させようと、ここで長めの休憩を取りました。
ちなみに旭社は628段目です。
【そうか、これは「山登り」なんだ】
旭社からの階段周辺は、今までよりもうっそうとした木々に囲まれて神秘的な雰囲気です。日差しが遮られるので暑さもしのげます。
しかし階段は急です。急だけれども柵や手すり、石垣はとても綺麗に丁寧に造られており、石灯籠も多く並びます。森の中でこんなに整備された道を長い時間歩くなんて初めての経験でした。
そこでふと気づきました。「神社にご参拝」と考えて登るからすごく疲れるのでは?初めから「山に登る」と心得ておけば、精神的にもうちょっとラクなのでは…?
山を登っているのだと思うと、これまでの道行きにも合点がいきました。
【遂に本宮に!見晴らし最高!】
登山の心持ちで最後の一直線の大石段を登ると、鳥居越しに見えるお宮。またしてもフェイク?!と一瞬疑いましたが、今度こそ本当のご本宮でした。ここまでの時間は約1時間半。785段を登りきったんだ!という感動は、本宮ご参拝よりも展望台からの眺めを目にした時により感じました。大門からのものとは比べられない、讃岐平野の向こうの瀬戸内海まで見渡せる大パノラマです。徳島県境の讃岐山脈も綺麗に見えました。
本宮は桧皮葺の立派なもので、広い拝殿から南の御穂津姫社に続く長い回廊や、脇にある大きなクスの御神木、白砂利を敷いた境内などとても清々しい雰囲気がありました。この日はとても暑かったので、境内の休憩所には氷柱が置かれ、皆さん直接触ったり、近くで涼しい空気に触れたり、思い思いに涼んでいました。
【さらに奥宮もあります】
本宮脇の道を進むと、さらに石段を登ってゆく奥宮があります。しかしこの日は先日の台風による倒木で山道が塞がれたため、残念ながら立ち入り禁止でした。奥宮まで登ると1368段、登れなくて良かった…カモ…?と不謹慎な事を思ってしまいました。
【後ろ髪を引かれながら帰路へ】
絵馬殿や緑黛殿(結婚式場)、社務所をゆっくり見てまわり、もう一度展望台に行き…と、「ここまで折角来たのに降りたくない!」という思いを引きずりつつ、帰路に着くことにしました。御穂津姫社前からの下りは「下向道」といい、登りと違うルートを旭社まで辿ります。下り階段とはいえ急である事は変わらず、気を抜いて歩くとけっこう足にきます。それでも登りの時よりも落ち着いた心持ちで、改めて旭社をご参拝する事ができました。
【琴平温泉もありますよ】
門前町まで戻り、この日は宿泊しない予定でしたので、琴平温泉のホテルで日帰り入浴をしてサッパリできました。夏場のご参拝は本当に汗だくになるので、多くのお宿で日帰り入浴OKなのはとても嬉しい点です。
もちろん琴平温泉に宿泊して門前町や象頭山遊歩道をゆっくり散策するのも面白いと思います。今度は秋か冬に、温泉も楽しみながらゆっくりご参拝しよう…と、初の金刀比羅宮ご参拝を終えました。