戦後日本の復興の象徴 静岡県「佐久間ダム」を訪問

戦後日本の復興の象徴 静岡県「佐久間ダム」を訪問

記事更新日: 2016-02-11

戦後日本の復興の象徴 静岡県「佐久間ダム」を訪問

静岡県浜松市の北部、愛知県との県境にある「佐久間ダム」は、戦後日本の復興の象徴とも言われるほど、当時の巨大プロジェクトでした。暴れ川として有名な「天竜川」を堰き止めるという難工事。さらにその工事を、水量の少ないわずかな期間で建設しなくてはいけないというハードスケジュール。今回は、ひっそりとした山間部に静かに水を蓄えている「佐久間ダム」を、じっくり見学してみましょう。

静岡・愛知・長野の3県にまたがる巨大ダム

「佐久間ダム」は愛知県との県境、静岡県浜松市天竜区にあります。まわりは山々に囲まれ、78万人もの人口を誇る浜松市内とは思えないほど静かな風景が広がります。というのも「佐久間ダム」がある地域は、以前は佐久間町という町でした。近隣の町村が2005年7月に合併し、佐久間町も浜松市の一部になったのです。この「佐久間ダム」は、林業が中心の浜松市天竜区における数少ない観光スポットのひとつとなっています。

まずは、「佐久間ダム」を見学する前に「佐久間電力館」という博物館で、「佐久間ダム」についての予習をしましょう。

戦後日本の復興の象徴 静岡県「佐久間ダム」を訪問

当時の建設工事のようすがよくわかる「佐久間電力館」

「佐久間電力館」は、「佐久間ダム」や水力発電の仕組みなどを、パネルや動画を使って詳しく説明してくれる入場無料の博物館。ダム建設工事の様子を再現した模型を見ると、当時の工事の苦労がよくわかります。断崖絶壁で仕事をする大型重機を、いったいどうやってここまで運んできたのか不思議です。模型以外では、ダム建設の記録映画も見応えがありますし、当時の新聞を拡大したパネル板の展示もおもしろいですよ。

「佐久間ダム」は昭和27年に発足した特殊法人「電源開発」によって工事が行われ、わずか3年という短い期間で完成させた、戦後の土木技術史の原点と言われる巨大プロジェクトだったことが、この「佐久間電力館」の展示物から学ぶことができます。

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暴れ川で有名な「天竜川」に造られた念願のダム

諏訪湖を源流とする「天竜川」は、しばしば大洪水をおこす「暴れ川」として有名でした。流域は中央構造線が通り、流出する土砂も多かったようで、治水工事は昔から幾度となく行われてきました。その天竜川にわずか3年という短い期間で、念願のダムを完成させたというニュースは当時の日本でも大きく取り上げられたようです。

天竜川自体の流れを確保しながら、同時にダム建設をしなければなりません。さらに、融雪や大雨による洪水を警戒しながらすすめる工事は、雪解け水が増える3月までにどうしても終わらせる必要があったため、ケーブルクレーンや大型油圧ショベルなどの大型重機をフル稼働させました。その結果、1日のコンクリート打設量は当時の世界記録を作ったほどです。また、転落や落石などの事故による作業員の殉職があとをたたず、完成までに96名もの尊い命が失われました。「佐久間電力館」の傍らには、殉職者を弔うための慰霊碑が建立されています。

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ダムが一望できる展望台へ

さて、「佐久間電力館」でダムについての学んだ後は、館内屋上のダム湖が一望できる展望台に移動してみましょう。展望台からは重力式コンクリートダムの全容が見えます。高さ155メートルは日本のダムで9位の高さ、総貯水容量は日本で8番目という巨大ダム。そしてダムの天端には、県道1号線が走っています。この道路で対岸に渡るとそこは愛知県。まさにダムが静岡県と愛知県の県境の役割を担っています。またダムで堰き止めたダム湖「佐久間湖」は、長野県の天龍村にもつながっているため、「佐久間ダム」は、静岡・愛知・長野3県にまたがる日本でも珍しいダムなのです。

展望台には「やまびこスポット」があり、そこから対岸に向かってさけぶと、ダムと山に反射してやまびこが聞こえます。訪問した人たちが思い思いの言葉をさけんでいるのがおもしろいですよ。

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ダムカードをゲット!

「佐久間電力館」では、「佐久間ダム」のダムカードを入り口で配布しています。最近、知名度がじわりじわりと上がってきたダムカード。各ダムの詳細データがカードに書かれてありますが、ダムカードはそのダムを直接訪問した人にしか配布してくれないので、とても貴重なカードとなっています。「佐久間電力館」では「佐久間ダム」のカードと、下流にある「秋葉ダム」のカードを配布しています。

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雨の日にはしっとりとした空気が漂い、訪れる人も少ないのですが、紅葉の時期は赤や黄色に染まる山肌が美しく、観光客も増えて賑わいます。「佐久間ダム」を見学することによって、子どもたちが節水を心がけるきっかけにもなり、ファミリーにもおすすめのスポットですよ。

ライター常盤兼成

この記事を書いた人 常盤兼成

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小中学生に、勉強だけでなく旅の魅力も伝えている学習塾講師です。 乗り物も大好きなので、塾生の保護者様からの旅行の相談もよくあります。 知らない土地に行き、知らない人と会話をし、現地の食べ物をいただくという体験こそ旅の醍醐味です。みなさんにもたくさん旅の魅力を感じてほしいと思います。

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